香川県高松市に、まるで和船のような曲線美をもつ建築があるのをご存知ですか?
その名も「船の体育館」。
正式名称は旧香川県立体育館で、世界的建築家丹下健三氏が手がけた名作です。
なぜ船なのか? どこで見られるのか? その構造とは?
こちらの記事では、船の体育館の場所やアクセス・年表を徹底解説していきます!
船の体育館とは?
旧香川県立体育館、
— sahisa (@nekokobasiri) August 4, 2025
丹下健三の「船の体育館」
やはり劣化が進んでいる
体育館の周り一周した動画です pic.twitter.com/0bDlCI1FNe
最大の特徴は、和船を思わせる反りを持つ屋根のフォルムで、見る人に「まるで船のようだ」と印象づける外観が名前の由来になっています。
この建築は単なるデザインだけでなく、構造的にも非常にユニークです。
屋根を支えるのは、ケーブルで吊るす「吊り屋根構造」と呼ばれる工法で、これにより内部には柱が一切なく、1,300席を備えた広大な空間が実現されています。
また、この建物は1964年の東京オリンピックと同年に竣工した「国立代々木競技場」と兄弟関係にあり、同じく吊り屋根構造を採用しています。
モダニズム建築としての美しさだけでなく、日本的な造形美も融合された、まさに構造とデザインの結晶と言える存在です。
具体的な特徴をまとめると以下の通りです。
- 和船をイメージした反りのある屋根
- ケーブルによる吊り屋根構造
- 柱のない大空間(延床面積 約4,700㎡)
- モダニズム建築と日本文化の融合
これらの要素が一体となり、船の体育館は「構造も美も両立した名建築」として、国内外の建築ファンから高く評価されてきました。

建築って機能性だけじゃなくて、こんなに芸術的になれるんだ…!和船っぽい曲線が本当に美しいです。
船の体育館の場所はどこ?アクセス情報も!
船の体育館こと旧香川県立体育館は、香川県高松市福岡町二丁目にあります。
高松市街地の東部、港の近くに位置しており、アクセスも比較的便利です。
かつては地元の人々に親しまれる運動施設として利用され、周囲には住宅街や商業施設、公園などもあります。
基本データは以下の通りです。
所在地: 香川県高松市福岡町2丁目
敷地面積: 約6,640㎡(=テニスコート約26面分)
建築面積: 約1,512㎡
延床面積: 約4,707㎡
固定座席数: 約1,300席
構造形式: 鉄筋コンクリート造+吊り屋根構造
現在は建物の老朽化と耐震性能の問題により、2014年に閉館されています。
外観を見ることは可能ですが、内部への立ち入りは原則できません。
また、2025〜2027年にかけて解体工事が予定されており、この場所に建物が存在するのはあとわずかです。
建築好きの方は、現地の雰囲気だけでも今のうちに見に行く価値があります。
最寄り駅は「沖松島駅」や「高松築港駅」から徒歩15〜20分程度です。
周辺には駐車場もあるため、車でもアクセス可能なため、観光のついでに立ち寄る建築巡りスポットとしてもおすすめです。
アクセス情報は以下のとおりです。
- 所在地: 香川県高松市福岡町二丁目
- 最寄り駅: ことでん「沖松島駅」または「今橋駅」から徒歩15〜20分
- アクセス: 高松築港駅からもバスまたはタクシーでアクセス可能
- 駐車場: 付近にコインパーキングあり

歴史ある名建築がこんなところにあったなんて、知らなかったです!
「今のうちに見ておきたい!」と感じた方は、ぜひ一度、現地へ足を運んでみてください。
船の体育館の年表は?
船の体育館 pic.twitter.com/Oz8gh97wJG
— 45山 (@origami_turu) January 11, 2024
船の体育館(旧香川県立体育館)は、1960年代から2020年代まで60年以上にわたり、多くの人々に親しまれてきた建築物です。
その歴史は、建築の進化だけでなく、地域社会との関わり、そして保存か解体かの選択まで、さまざまなドラマを含んでいます。
ここでは、建設から現在に至るまでの重要な出来事を、時系列でして紹介します。
主な年表
- 1961年:設計開始。 丹下健三(都市建築設計研究所)が意匠設計、岡本剛が構造設計を担当。
- 1964年8月10日:竣工。 和船をイメージした屋根と吊り屋根構造で話題に。建築面積1,512㎡、延床面積4,70㎡。
- 1964年:東京オリンピック開催年。 国立代々木競技場と「構造の双子」と呼ばれる。
- 2012年:耐震診断の結果、基準値を大きく下回ることが判明。
- 2014年9月30日:老朽化と耐震不足により閉館。
- 2017年:ワールド・モニュメント財団「危機遺産リスト」に登録。
- 2020年代:保存か解体かの議論が続く。 一部では民間活用(ホテル転用)提案も。
- 2025〜2027年予定:解体工事を実施予定。 建物の3D記録や動画保存プロジェクトが進行中。
このように、船の体育館は1960年代のモダニズム建築の象徴として生まれ、時代の変化とともにその存在価値が見直されてきました。
特に2017年以降は、国内外の建築関係者からも注目される存在となり、文化的な意味でも非常に貴重な建築であることが証明されています。

ただの体育館じゃなくて、時代を映す「建築の物語」が詰まってるんですね。60年以上の歴史って、想像以上に深かった…!
吊り屋根構造とは?
高松市、旧香川県立体育館
— 新道coron🍡 (@shindou_2016) August 23, 2025
昭和39年築。丹下健三が設計した代々木体育館の原型と言われる体育館は実際に見るとまさに船の体育館でした。
解体か再生かどうなるのだろう。#香川県 pic.twitter.com/kJmOAu6kaW
これは、屋根を下から支えるのではなく、上からケーブルで吊り下げる構造のことで、空間に柱が一切ない開放的な設計を可能にしています。
この構造によって、観客の視界を遮る柱がなくなり、1,300人を収容できる広大な体育館空間が実現しました。
体育やイベントを行う際にも、視認性・機能性・安全性のすべてにおいて非常に優れています。
具体的なポイントは以下のとおりです。
- 上部の鉄塔とケーブルによって屋根を吊るす構造
- 内部に柱が一切ない大空間
- 地震時の揺れを構造体が分散吸収
- 軽量化により地盤への負荷を軽減
- 施工時に高精度な技術が必要(当時は最先端)
この吊り屋根構造は、同じく丹下健三氏が設計した国立代々木競技場にも採用されています。
実際、船の体育館と代々木競技場は「構造の兄弟」とも言われるほど、設計思想が共通しています。
ただし、船の体育館は塩田跡地という非常に地盤が弱い土地に建てられたため、構造設計者・岡本剛氏が地盤対策に徹底的な工夫を凝らしています。
地震や風荷重を考慮した上で、建物全体にバランスよく力が分散されるよう設計されており、その完成度の高さは世界的にも評価されています。

吊るして支えるって、建築って本当に面白いですね!「見せるデザイン」と「見えない工夫」が共存してるのが最高です!
船の体育館の保存運動は?
G7広島サミットに劇的なメッセージを演出した平和記念公園の設計士・丹下健三が香川に遺した「船の体育館」はやっぱり残すべきだと思う。 pic.twitter.com/ybm7FX0YST
— 法堂 (@hatocotoco) May 21, 2023
旧香川県立体育館(船の体育館)は、単なる地域の体育施設を超えた世界的に評価される建築作品です。
その文化的価値を背景に、国内外で解体を惜しむ声が高まっています。
特に注目されたのは、2017年にアメリカの「ワールド・モニュメント財団(WMF)」が選定する「危機に瀕した世界の文化遺産リスト」に登録されたことです。
これは「放っておくと失われてしまう、世界的に貴重な建築物」に対する警鐘であり、船の体育館は国際的に保存価値があると認められたことを意味しています。
保存運動の動きは次のような形で進められています。
- 建築家・研究者・地元市民による保存運動の立ち上げ
- 活用案として、ホテルや文化施設への転用も提案
- 署名活動やSNSを通じた発信で支援の輪が拡大
- 3Dデータや動画での記録保存プロジェクトも進行中
一方で、香川県側は「耐震性や老朽化、緊急輸送路の妨げになる」などを理由に解体の方針を変更していません。
そのため、「文化的価値 vs 安全面・行政判断」という形で、現在も意見の対立が続いています。
建築業界からは「丹下健三の傑作がまたひとつ失われる」という強い危機感もあり、今後の判断が注目される状況です。

海外で文化遺産として評価されてるのに、地元では解体されちゃうかもしれないなんて…
もどかしい気持ちになりますね。
船の体育館についてよくある質問
まとめ
今回の記事では、丹下健三が設計した旧香川県立体育館、通称「船の体育館」について詳しく紹介しました。
以下にポイントをまとめます。
- 船の体育館は香川県高松市にある、1964年竣工の吊り屋根構造建築
- 和船のような外観が特徴で、「国立代々木競技場」と構造的に兄弟関係
- 2014年に老朽化と耐震不足で閉館、2025〜2027年に解体予定
- 国内外で保存の声が上がるほど、文化的価値が高い
- 外観のみ見学可能で、香川県の建築巡りにも最適なスポット
この建築には、単なる「体育館」の枠を超えた、丹下健三氏の思想と技術が詰まっています。
今後解体問題がどうなっていくのか注目です。